3

3/3
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
このホテルは、かって女主人が切り盛りしていた。 5年前、この島を未曾有の大型台風と大雨が襲った。 島の住民は皆、溺死するか、倒壊した建物と一緒に死んだ。 森の中の、少し小高いところに建っているこの洋館は、なんとか無事に、そのままの状態で残ったようだが、しかし女主人や従業員は避難所にいて、その避難所が大雨で水没したため、全員が死亡した。 この洋館ホテルの主人も、従業員も、もはや誰もこの世にはいない。 しばらくして解体作業員の船が島に到着し、解体作業は時間通りに行われ、洋館は完全に解体され、跡形も無くなった。 解体作業を終えると、もう夕方に差し掛かっていたが、ふと空を見上げると、荘厳なまでの夕焼け空に、流れ星がひとつ。 遠くの方へと消えていった。 ふと、暗い海の水面を見ると、男がひとり浮かんでいるように見えた。 だがよく見ると、そこには誰もいなかった。 静かな、暗い海だけが、そこに見えた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!