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「はい、わかりました。じゃあ時間通りに始めさせて戴きますから」
社長は携帯で話しを終えてこっちに向かってきた。
「予定通りだから。あいつらの船が着いたら始めていいよ」
ものすごい猛暑で、この島の気温はかなり高かった。
だが、海から吹いて来る風は心地良く、なんともそんな海風に吹かれていると、風雅な気分にもなる。
まあ仕事でここに来てるだけだから、そんなことも言っていられないが。
「最後はあの洋館を取り壊して終わりでしたよね、社長」
「そう、そう。古い建物だから解体の手間もそれほど掛からんだろう。もう直ぐカタがつくよ」
「わかりました」
森の中の小道を抜けて、洋館が建っている場所まで歩いた。
瀟洒な洋館で、こんな島にはよく似合っている。
解体作業員は後からやって来るはずだが、船が遅れてまだ着いてないから、実際の解体作業はもうちょっと後になるだろう。
洋館を下から見上げた。
感じのいい洒落た建物だ。
扉を開けて、中に入ると、元は豪華で古風なホテルであっただろう佇まいが、そのまま残っていた。
一度こんなホテルに泊まってみたかったなと思ったが、もはや朽ち果てた廃墟に過ぎず、そしてこの後、ここは解体されるだけだ。
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