嫉妬

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夜中になっても、僕は眠れなかった。 「はぁ・・・目が冴えちゃった・・・」 二人のことを考えると、どうしても、そういう行為に想像が及んでしまって、僕の目は冴えていく。 想像する二人の睦言を・・・その場面を・・・ 一ノ瀬さんの白い白い肌に吸い付く来村先生の唇・・・真っ赤になって喘ぐ一ノ瀬さんは、僕が見たことの無いような貌をして来村先生を誘う。 僕は、なんとなく、いやきっと、予感がしていた。 廊下へと静かに歩き出した。 一ノ瀬さんの部屋は、もぬけの殻だった。 来村先生が居ると思われる客間へと近づく。 段々と・・・小さい物音が聞こえてくる。あれは・・・一ノ瀬さんの声?・・・ 扉の前に忍び寄ると、扉へと耳を近づける。 「はぁ・・・はぁ・・・あっ・・・きらむ・・・せんせ・・・うん・・・あっ・・・はぁ・・・・」 「一ノ瀬さん・・・はぁ・・・はっ・・・はぁ・・・」 二人の抱き合って縺れ合う姿が目に浮かぶ。 僕は、扉を少しだけ、薄らと開けた。 ベッドが目に入る。 二人は・・・夢中になって互いに互いを求め合っていた。 これが、愛の行為・・・大人のセックス・・・僕が求めていた一ノ瀬さんの貌・・・ 「っ!!誰です?!」 一ノ瀬さんに、気付かれてしまった。僕はその場に立ち尽くす。 来村先生から離れて僕を見つめる。その瞳は冷たい色をしていた。 「覗きとは、いい趣味とは言えませんね。灯くん・・・」 まだはぁはぁと、息を堪えながら、一ノ瀬さんが僕の方に全裸で近づいてくる。 僕は、その姿から、目を逸らせた。涙が一筋、頬を伝って落ちた。 「待ってください。一ノ瀬さん。灯くん、悪かった・・・君の居る家でこんなこと・・・申し訳無かった・・・」 来村先生が、シャツを羽織りながら、僕に謝ってくれる。でももう遅いよ・・・先生。 貴方と一ノ瀬さんの行為は見させて貰ったし、声も聞いてしまった。もう遅いんだ・・・ 「僕はもう・・・貴方のことを諦めます・・・」 なんて馬鹿な僕・・・まだ告白すらしていないのに・・・諦めるって・・・愚かな言葉だと、僕は思った。
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