嫉妬

12/13
前へ
/176ページ
次へ
灯くんを揶揄かうのは楽しかった。いや、揶揄かうというか、私の一言で顔色を赤くしたり白くしたりして見せるのを見るのが、好きだった。 だから・・・嫌がることを無理矢理にしたり、私の事を一心に思って居るのを知らんぷりして、彼をあしらうのが楽しかった。 「僕はもう・・・貴方のことを諦めます・・・」 灯くんはハッキリとした口調でそう言った。 貌は、蒼白に真っ白に染まっていた。 これは・・・やり過ぎたか・・・ 学園で、何か起こるだろう事は、事前に分かっていた。 あの学園で、男しか居ない閉ざされた世界で、彼のような存在が急に入って来たら、他の生徒がどう出るかなんて、明らかだった。 それでも、私は処世術を教えなかった。 どう処理すればいいのかを、敢えて教えなかった。 傷ついた貌を、私は見たかったのかも知れない。 それなのに、彼は、傷ついた貌を、見せてはくれなかった。 触れられた事実は、明らかなのに・・・その事に対して、私に頼っては来なかった。 こう言う事があった、と事務的に言うだけだった。 だから私は、体に聞いてやった。 本当は赤くなってなど居ない彼自身に、触れ、そして反応を楽しんだ。 彼は、他人に触れられる事に慣れて居る。 だが、私に触れられる時は、違った反応を見せるのだ。 彼は私の事が好きだから・・・ 彼の気持ちを知っていながら知らんぷりして、とうとう、言わせてしまった。 「諦めます・・・」と・・・ 始めて会った時から、惹かれていた。彼の美しさ、清純さ、清廉さに。真っ白な彼を、私の色に染めてみたかった。 だけど、私は、こう言った。 「未成年の貴方を絶対に抱きません」 この枷があったから、私には彼に手を出せなかったんだ・・・ 愚かな自分。自分で自分の首を絞めている。今だって、来村先生なんかと抱き合う所を見せて・・・嫉妬させようとした・・・ 私はなんて愚かな大人だ・・・
/176ページ

最初のコメントを投稿しよう!

287人が本棚に入れています
本棚に追加