嫉妬

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私は、バスローブを羽織って、扉の近くに突っ立っている灯くんの傍に近づいた。 私が近づくと、ハッとしたように顔を上げ、一歩一歩後ずさる。 遂には、その場から逃げ出すように走り出してしまった。 「待ってください。」 私は叫んだ。 そして、来村先生に向かって言った。 「先生、申し訳ありませんでした。ここで、ゆっくりお休みになってください。」 そう言い残すと、灯くんの後を追った。 私が・・・この私が、駆け出すなんて・・・走って後を追うなんて・・・考えたことも無かった。 バスローブの裾が、はだける。 灯くんはまた、部屋に立て籠もってしまった。 私は、ドンドンと、うるさく扉を叩いた。 鍵は掛かってしまっている。 また・・・鍵を掛けさせてしまったね・・・ 「灯くん、ここを開けてください。話があります。」 私が扉の向こう側に居る灯りくんに呼び掛けると、「僕には話しなんて、ありません」と言って、鍵を開けてはくれなかった。 それでも私は、ここで引き下がる分けには行かない。 彼に、誤解を与えたままで居る分けには行かない。 私の気持ちを、彼に伝えよう、いや、伝えたい。今、この時に。 「お願いです。今まで、貴方に対して、随分と意地悪なことをしてきました。申し訳ありませんでした。でも、それは貴方の新鮮な反応が見たかったからなのです。悪気が無かったと言ったら、嘘になります。でも・・・それ以上に、私は貴方のことを・・・お願いです。扉を開けてください。」
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