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彼は、年の割には小綺麗な見た目をしていた。
少し、弱々しい印象も、受けた。
それは何故なら、彼が膵臓ガンという重い病に冒されていたからだと思う。
私は、彼の担当医になった。
彼は、あと余命半年と宣告されながらも、自分の息子のことを第一に心配していた。
息子は、僕が居ないと生きていけないだろう・・・と・・・
縋るような瞳で、私を見た。
キレイな、とても澄んでキレイな瞳だった。
茶色く光る光彩が、私を虜にした。
「先生、お願いがあります。」
そう言う彼の姿は真摯で、真剣そのものだった。
私は、彼のお願いというものを、聞いてみた。
自分が亡き後、自分の代わりに、息子の面倒を見て欲しい・・・と・・・
何故そんなことを言い出すのか、分けが分からなかった。
親戚なり、預ける先はそれなりにあるだろう地位に、彼は居たから。
製薬会社の社長だ。血筋を訴える者は多々居ただろう。
だが、彼はそれらを信じて居なかった。
自分一人で息子を育て上げ、そして、その息子を監禁していることを、私に告げた。
何故そんなことを私に言うのか、私は、彼に唯一信じられた者となった。
高貴で美しい彼は、私のものになった。
そして、彼の息子の写真を見せられた。
彼と同じように、高貴で、純粋で、純白を絵にしたような男の子だった。
私は、一目で、息子に魅せられた。
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