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翌日、ガチャッと、鍵が開く音がして、一ノ瀬さんが僕の部屋に訪れた。
僕はサッと、ベッドから起き上がる。
一ノ瀬さんは、片手に朝食のトレーを持っていた。
「学園には、インフルエンザに罹ったので、しばらくの間休むことを伝えました。さぁ、朝食です。ちゃんと食べて。」
一ノ瀬さんは、僕の部屋のテーブルの上に、朝食のトレーを置いた。
そのまま、僕がテーブルに近づくのをジッと見て居る。
「あの・・・一ノ瀬さん・・・ホントに・・・・僕・・・ごめんなさい。」
「ああ、もう謝罪の言葉はいいですよ。それよりも、早く食べて下さい。」
僕は、一ノ瀬さんの静かな瞳に見つめられながら、朝食を平らげた。
一ノ瀬さんは、フッと溜息を一つつき、トレーを持ち、僕の部屋を後にしようとした。
僕は、それを止めた。
「い、一ノ瀬さん、僕、本当にごめんなさい。あの・・・許してくれますか?」
僕の必死の言葉を聞き、一ノ瀬さんは出て行こうとしていた扉を閉じ、こちらを振り向いた。
「許す?何をですか?貴方は私に何を許して欲しいのですか?」
「そ、それは・・・貴方の他の人に、抱かれたことを・・・・・」
一ノ瀬さんは、フッと、笑いを浮かべた。
「許すも許さないも、私には貴方のことを自由にする権利はありません。私は貴方を愛しています。それでも足りないのなら・・・私は貴方を止めることは出来ません。貴方は、自由に恋愛をしていい・・・私では無くとも。しかし、私にはそれが許せない。だからこうして、貴方を拘束しています。私をこんな風にしたのは貴方です。どう責任を取ってくれますか?」
一ノ瀬さんは、一気に喋って、僕の顔を凝視した。
冷たい・・・冷たい貌だった。
「あの・・・ご、ごめんなさい。ぼ、僕は・・・本当に貴方のことを愛しています。それだけは、信じてください。もう、他の人に抱かれることも、しません。貴方にだけ、愛されたら、それだけで十分なんです。でも・・・どうか僕に、最後まで触れて下さい。」
僕は必死に、一ノ瀬さんに訴えた。
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