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 何か名案はないものかと辺りを見回すと、公園の入り口の辺りにちょうどいいものが目に入った。  ボキッと手折って、少しだけ自分より背の高い少女の頭に乗せる。 「ほら、芙蓉(ふよう)には芙蓉(ふよう)が似合ってんじゃん」  少年の一連の行動に、ボーゼンとする人の芙蓉(ふよう)と、頭の上で揺れる花。 「お前の名前の花ってさ、一個枯れてもまた咲くし、なんかスゲー企業の名前だったり、富士山の別名だったりするしスゲーじゃん、人間よりやべーしパネーじゃん、だから怒る必要も泣く必要もねーっつうか、うん!」  生前の芙蓉(ふよう)のばあちゃんには、北方名物・おもろい恋人とほうじ茶をよくごちそうしてもらった恩がある。  だからいじめっ子の健司が海斗と芙蓉(ふよう)がたまの帰り道だとか、夏休みのお互い友達と遊んでなくて空いた時間だとかにいつも一緒にいるのを見るたび突っかかってくるのがうっとおしくてムカつくだとか、そんな事はなんの関係もない。  おそらくきっと。多分。   「……公園の花折っちゃって、いーけないんだーいけないんだー」 「なんだよ、オレはお前がなー、泣きそうだったからなー」 「海斗が必死すぎて笑えて来ちゃった、ああバカみたい。あんなやつ気にしなきゃよかった、ホントバカみたい」  芙蓉(ふよう)が笑う。花の芙蓉(ふよう)が日の光に反応して、桃色に染まるみたいに。  夏の季節に、芙蓉(ふよう)の花は開花する。海斗の言葉で、人の芙蓉(ふよう)は開花する。  幼なじみと同じ名前の花が咲き始めて。花と同じ名前の幼なじみが、暇を持て余した長い夏休みに、満開の笑顔で遊びへ誘いに来て。  それでようやく、ああ今年も暑くてたまらない、楽しい季節がやってきたのだなあと海斗は感じるのだ。
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