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「皆無事か」
王家の正装。そして青い布を肩に掛けたザイードが姿を見せる。
特殊部隊として一番守りの堅い危険な敵地の任務に就いた者達を目にし、ザイードはすぐに皆に声を掛けていた。
一人一人、怪我の有無を確認しながらザイードは言葉を掛けていく。
次期国王が来ると聞かされていたイザーク首相はその姿を見開いていた目で追っていた。
敬礼したまま、キヤーナはザイードとその姿を見つめるイザークを静観する。
自国のためであろうと他国のためであろうと、命を懸けて戦いに身を投じた者に対してのこれがザイードの姿だ。
何よりも一人一人を大事に思っている。
キヤーナはザイードのその姿を陰ながらずっと見てきている。
城に訪れる民と身近に接し、そして外での民の生き方に共感し、独り立ちして民と共に手を取りザイードは率先して悪事を働く権力者達と戦ってきた。
ザイードの振る舞いは王族としての振る舞いではなく、人としてザイード自身が極当たり前にずっとそうしてきていた姿であった。
戦地に行けば命を落とすは当たり前であってはならない──
危険な任務につけば命を落とすは当たり前であってはならない──
だからこそ全てを重く受け止めている。
ザイードは部隊の皆に礼を言うと、やっとそこにいたこの戦を起こした者達を振り返った。
ザイードはその者達を一瞥する。
そしてキヤーナに尋ねた。
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