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官邸を占拠してから数時間が経過していた。
捕らえられたイザーク達は、今は頭の後ろで両手を組まされ壁際に立たされている。
一人ずつ一列に並び前からは特殊部隊の銃が狙っていた。
皮肉なものだ──
自分に銃の扱いを教えた物達に、こうしてまた銃を向けることになろうとは。
キヤーナはその姿を見つめる。
あの日もただ守る為に銃を持っていた。
そして、今もその目的は同じだ──
このくだらぬ支配下から全てを解放するために、今構えている銃には大きな意味と役割がある。
「ザイード様が御着きになられました!」
外から戻ってきた部下が敬礼をして報告する。
キヤーナは部下に無言で頷いていた。
数人の兵士を護衛に連れたザイードがあちこち破壊された官邸の廊下を歩く──
ファジュルはこの国の反政府軍に力を貸し、制圧して勝利した側となる。
だがそのままではこの国から引き上げることはできない。
残されたこの国の民達だけでは国家として建っていくには全てが不十分だった。
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