番外~砂の王国~中編

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・ 何はともあれ、一先ず上手くいきそうだ。 ザイードは兄とその執事のやり取りを腕を組み、楽しみながら眺めている。 アサドはハーディに答えた。 「医者は……取り合えず産科の専門医を連れていく……驚いてその場で産まれる恐れがあるからな……」 念には念を──…は軍人として当たり前の心構えだ。 「畏まりました。では直ぐに手配致します」 ハーディは病室を後にする。 ザイードはベッドに腰掛けたままハーディを見送ったアサドの背中を見つめていた。 「ザイード……」 アサドは振り返らずに名前を呼ぶ。 ザイードはアサドの近くへ歩み寄った。 「すまないが、俺の方が先に父親になるようだ」 アサドの言葉にザイードは思わず笑っていた。 「めでたいことに先も後もない──…何ならお披露目も一緒にするか……」 笑いながらもそれは本心からの言葉だった。 やはり毎度のことながら先を行ってくれる兄だ──。 だが、悔しさよりも嬉しさの方が際立つ。 アサドはザイードの言葉にふんっと笑った。
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