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prologue.
そう、例えばの話。
自分がもしここで、今後の予定にない突発的な行動を取ったら、世の中はどう動くのか考えた事はあるだろうか。
スクランブル交差点を行き交う暴走車や走行中の電車の前に飛び出したり、高層ビルの屋上から大袈裟に飛んでみたり水中でずっと息を止めてみたり、やれるかも知れないけど誰もがやらないような事を敢えてやってみたらどうなるのだろう。
なんて。たまの暇潰しに考えたりする。
今がまさにその時だ。乗り過ごした電車を待ち、いつもは忙しなく叩いているモバイル端末を眺めることすら億劫となり暇を持て余していた。
欠伸を噛み殺して、涙目で向かい側のホームを眺める。耳に差したカナル型のイヤフォンからは最近のCMでよく聞く流行の洋楽が流れていた。
「暇……」
開き切らない口から眠気を帯びた声が零れる。
学校は都心にあると言え、家は郊外のせいか三度ある乗り換えの最後であるこの電車は非常に待ち時間が長かった。
肩から垂れ下がったよれたスクールバックを持ち直し、ふと視線を左に向ける。
黄色の誘導用ブロックの外側を、年寄りのおじいちゃんが小刻みに震えた手で杖をついていた。
外側を歩くだなんて危ないなぁ、そんな事を他人事のように思い、また一つ欠伸をした。
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