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不意に、頭を撫でる手が止まった。
はっと振り返ると、青天目の身体がほんの少し発光していた。
夜空に煌く星のような、そんな美しさを湛えていた。
「僕にとって君と過ごした向こうでの日々、そしてこちらでの時間、全てが宝物だ。僕がそう感じたように、君は、これからの君の毎日を、宝物にしていけることを願っているよ」
「待っ…!」
「流、大好きだと言ったけど…本当はあれだ。照れ臭くて、少し濁してしまったけど、」
ああ、だめだだめだ、行ってしまう行ってしまう。
言いたいことはまだ山ほどあるのに。言葉が、上手く見つからない。
「愛しているよ」
照れ臭そうに笑って、青天目はそのまま身体を引こうとした。俺は咄嗟に宙を蹴って、その腕を強く掴んだ。
驚いたような青天目の顔が、俺を真っ直ぐと見下ろす。
「っ、にいさん、あの時は、ごめん、ごめんね…!」
あのさ、兄さん。ごめんね。
あの時、そう言おうと思っていたんだ。
思っていたんだよ。
「俺もっ、俺もさ…っ」
声が震えた。
ああ、必死過ぎ。ダサすぎるだろ。
わかっていても、目からは涙が止まらない。
もういい、ただ一言伝えたい。
俺もね、兄さん。
「愛してるよ、さようなら…っ」
そっと手を離せば、青天目は情けない顔をして笑うと、
「敵わないなぁ」
そう言って一筋、涙を流したのだ。
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