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瞬間、周りが光の玉に包まれる。
今まで見たどんな徳のよりも、数の多いそれは幻想的な光を灯して天高く昇っていった。
そうか、これが六十年分の徳になるというわけか。
本当、どんだけ凄いヤツだったんだアイツは。
俺の涙が止まっても、兄の徳はいつまでも輝き続けた。
「ねえ、アザミ…これ」
不意に、春子が俺に声を掛けた。
黒い腕輪もこれまでになく白く輝き、何かに共鳴しているようだった。
「これで終わったってことだろ」
罰則具として付けられていたこの腕輪が、春子の寿命分の徳を得た事で、もう役目を果たしたのだと告げているのだ。
ああ、眠い。
死神になってからは一度も訪れたこのない眠気が、意識を丸呑みしていくように襲ってくる。
きっと、俺もそろそろなのだろう。
青天目がいなくなった今、俺が消えるのも時間の問題だ。
「なあ、春子」
擦れた声で呼びかけると、そいつは「何?」と俺の顔を見上げた。
「お前、俺の傍にいてくれるんだっけ」
夜の海で、まだ光の雨が止まない夜空の下で、不意にそんなことを〝元〟パートナーに聞いてみる。
春子は目をまんまるに開いた後、
「何、いて欲しいの?」
意地悪な口調で返すので、「じゃないと話が違う」と、俺も思わず突っぱねるような言い方で返してしまった。
「嘘嘘、冗談。…うん、いてあげる。約束だからね」
「随分上から目線だな」
「だって、青天目さんに化けて出られても困るからね」
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