最後のお悔やみ

15/21
前へ
/243ページ
次へ
 瞬間、周りが光の玉に包まれる。  今まで見たどんな徳のよりも、数の多いそれは幻想的な光を灯して天高く昇っていった。  そうか、これが六十年分の徳になるというわけか。  本当、どんだけ凄いヤツだったんだアイツは。  俺の涙が止まっても、兄の徳はいつまでも輝き続けた。 「ねえ、アザミ…これ」  不意に、春子が俺に声を掛けた。  黒い腕輪もこれまでになく白く輝き、何かに共鳴しているようだった。 「これで終わったってことだろ」  罰則具として付けられていたこの腕輪が、春子の寿命分の徳を得た事で、もう役目を果たしたのだと告げているのだ。  ああ、眠い。  死神になってからは一度も訪れたこのない眠気が、意識を丸呑みしていくように襲ってくる。  きっと、俺もそろそろなのだろう。  青天目がいなくなった今、俺が消えるのも時間の問題だ。 「なあ、春子」  擦れた声で呼びかけると、そいつは「何?」と俺の顔を見上げた。 「お前、俺の傍にいてくれるんだっけ」  夜の海で、まだ光の雨が止まない夜空の下で、不意にそんなことを〝元〟パートナーに聞いてみる。  春子は目をまんまるに開いた後、 「何、いて欲しいの?」  意地悪な口調で返すので、「じゃないと話が違う」と、俺も思わず突っぱねるような言い方で返してしまった。 「嘘嘘、冗談。…うん、いてあげる。約束だからね」 「随分上から目線だな」 「だって、青天目さんに化けて出られても困るからね」
/243ページ

最初のコメントを投稿しよう!

288人が本棚に入れています
本棚に追加