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epilogue.
「ん…」
目を覚ますと、目の前には毬花の顔があった。
「えっ?」と、吃驚して声を上げると、目の前の顔も「あっ」と大きな声を張り上げた。
「お母さん!!お姉ちゃんが目え覚ました!!!」
毬花の大声が耳を劈く。…なに?すっごくうるさい。
瞬間、すぐ傍にあるカーテンが開き、「ホント?!」と今度は母が顔を覗かせた。
何事だろうか。
え。と固まった私は毬花と母の顔を交互に見つめる。
なんだ。私……何してたんだっけ。
あれ…、学校行こうとしてたんじゃなかったっけ。
あれ、あれ…?私…。
何、してたんだ…?
「お姉ちゃんお姉ちゃんっ」
毬花が私の身体にしがみついている。この妙な光景に、私は「えっ」と眉根を寄せるしかなかった。
「はるこちゃんっ」
涙声のお母さんが私の近くまで駆け寄ってきたと思ったらわんわんと泣き出した。
大の大人が、子供のように泣き出す姿を私は初めて見た。
「よかった、よかったぁ」と二人して構わず声を張り上げるので、部屋の外から「雨賀谷さん、静かにお願いします」と誰かが注意している声が聞こえた。
何が起きているのか全くわからなかったけれど、私も気付いたら、
「あ、れ…」
ぽろ、っと涙を流していた。
「お母さんっ、お姉ちゃんが泣いちゃった!」
「どうしたの?!春子ちゃん、どこか痛いの?!」
「あ、ちがっ……」
ぽた、ぽた、と私の気持ちとは裏腹に、勝手に涙が流れては落ちて、手のひらを濡らしていく。
ああ、なんだ…何も思い出せない。
随分長い、夢を見ていた気がするのに。
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