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「…ゆめ、が…」
長くて、壮大で。
まるで映画を一本分が作れそうな、そんな、そんな。
大事な夢を。
「夢?」
「怖い夢でも見たの?」
毬花も母も不思議そうな顔をしていた。二人の姿が、起きる前より、とても鮮明に、そして心地良く見れるのは、何故だろう。
ああ、何故だろう。
暫くずっと、涙が止まらなかった。
母から聞いた話になるけど、私は乗り換えの電車のホームで倒れてそのまま病院に運ばれたのだと言う。
確かにどんなに思い出そうとしても、ホームでぼんやりしていたのを最後に記憶が途切れていた。
原因は貧血。それだけならいいけど寝不足も祟っていたのか、そこから三日間も目を覚まさなかったらしい。
「疲れてたのねえ…ごめんね、気付けなくて」
目を真っ赤にして私に謝る母を見て、酷く申し訳ない気持ちになった。
その目の下のクマを私が作ってしまったのだとしたら申し訳なくて、そしてどこか何故か、
少しだけ、嬉しかった。
そんな事を思うのはおかしいけれど、そうは思わずにいられない。
「ごめんね、お母さん…ありがとう」
ぽろっと口を突いて出た言葉に、母は驚いた顔をした後、「ううん」と私の身体を抱き締めた。
「あなたが無事で、何よりよ」
ああ、なんだろう。
「お姉ちゃん、本当に大丈夫…?」
「うん。毬花も…ありがとうね」
腕を握っていた毬花の手に更に力がこもった。「うんっ」と擦りつけるように私の腕に額をつけて、またわんわんと泣いていた。
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