epilogue.

4/9
前へ
/243ページ
次へ
「はるちゃんは随分変わったわねえ」  高校も卒業し、大学生になってからは、半年に一度、実家に帰るようにしている。  そこで数年ぶりに会った父方のお母さんに、そんな風に言われた。 「大人っぽくなったってことか?」  お父さんがそう言えば、お婆ちゃんは首を振って、「いいや」と。 「見た目は可愛らしいまんまだよ」  短く笑い「はい、お小遣い」と五百円玉をくれた。  「な、なんだか複雑だなぁ」と頬を掻いた。もう二十一歳になるんだけど。 「変わった、か」  十八歳のあの時から私の中で、確かに何かが変わっていた。  変わったのは周りじゃなくて、私だったということか。  この結論に至ったのは、つい最近で…随分と時間がかかってしまった。 「そういえばお姉ちゃん、溜息も吐かなくなったもんね」  十五歳となった毬花が、持っていたアイスのスプーンを揺らしながら「うんうん」と頷いていた。 「溜息吐くと、幸せが逃げちゃうから…毬花はずっと注意してたんだよっ」 「まりちゃんも偉いねえ、はいお小遣い」 「やりい」  お婆ちゃんから五百円を貰ってソファから立ち上がる毬花に、私は「お礼くらいいいなさい」とその頭を小突いて部屋に戻ろうとした。 「あ、でも毬花。注意してくれてありがと」 「え…?う、うん」  小突かれた額を押さえながら頷く毬花に、私は小さく笑ってリビングを後にする。 「やっぱり、はるちゃんは変わったねえ」  お婆ちゃんは今一度、静かに呟いていた。
/243ページ

最初のコメントを投稿しよう!

288人が本棚に入れています
本棚に追加