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「はるちゃんは随分変わったわねえ」
高校も卒業し、大学生になってからは、半年に一度、実家に帰るようにしている。
そこで数年ぶりに会った父方のお母さんに、そんな風に言われた。
「大人っぽくなったってことか?」
お父さんがそう言えば、お婆ちゃんは首を振って、「いいや」と。
「見た目は可愛らしいまんまだよ」
短く笑い「はい、お小遣い」と五百円玉をくれた。
「な、なんだか複雑だなぁ」と頬を掻いた。もう二十一歳になるんだけど。
「変わった、か」
十八歳のあの時から私の中で、確かに何かが変わっていた。
変わったのは周りじゃなくて、私だったということか。
この結論に至ったのは、つい最近で…随分と時間がかかってしまった。
「そういえばお姉ちゃん、溜息も吐かなくなったもんね」
十五歳となった毬花が、持っていたアイスのスプーンを揺らしながら「うんうん」と頷いていた。
「溜息吐くと、幸せが逃げちゃうから…毬花はずっと注意してたんだよっ」
「まりちゃんも偉いねえ、はいお小遣い」
「やりい」
お婆ちゃんから五百円を貰ってソファから立ち上がる毬花に、私は「お礼くらいいいなさい」とその頭を小突いて部屋に戻ろうとした。
「あ、でも毬花。注意してくれてありがと」
「え…?う、うん」
小突かれた額を押さえながら頷く毬花に、私は小さく笑ってリビングを後にする。
「やっぱり、はるちゃんは変わったねえ」
お婆ちゃんは今一度、静かに呟いていた。
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