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郵便受けに手紙が届いていた。おばあさんが死んでから届け物は光熱費の明細書ばかりで、味気なくつまらない毎日を過ごしている。
あの人が亡くなって、四年も経った。
仕事を引退してから、五年目の夏、まさか先立たれるとは思ってもみなかった。
小言のうるさいばあさんだった。一日一度は口喧嘩をしてその度に仲直りしていた。
便箋は白色だった。
宛先は『私』当て。送り主は――、
喉の奥に、かたい物が詰まったような気がした。
ぴりっ、と慎重に便箋を開け、夏の日差しにじわりと汗を掻いた。
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