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光が遮断された空間で、身じろぎもせず、壁に耳をあて音を探る。あたりは水を打ったように静かである。かすかなざわめきすらなく、かわりに湿った土の臭いが濃く満ち満ちている。
やはりこの場所は地下にあるらしい。
しばらくして瞼をあげると、その両眼には先ほどよりもはっきりと周囲の様子が浮かびあがった。忍者の夜目は、度重なる修練により常人のそれをはるかにしのぐ。東雲もまた例外ではない。伊賀の忍術はこと地獄においても、おおいに役に立つようだ。
もっとも、だからといって彼の里に感謝の念を抱くようなことは、天地がひっくり返ってもないであろうが――。
東雲は壁に手を触れたまま、ゆるりと前に進んだ。しかしいくらも進まないうちに行く手をはばまれた。部屋の外は、三方を壁に囲まれた袋小路になっていたのだ。
「はて、十中八九どこかで上に通じているはずだが……」
指先をなめれば、やはり空気が上へと流れている。つられて天井をあおぐと、その場所だけ石材ではなく、鉄のような金属の板になっていた。
板は、床から伸びた四本の柱によって天蓋のように支えられている。
東雲は石壁のみぞに手をかけ、軽々とした身のこなしでてっぺんまで登ると、天板を押し上げようと試みた。
「ふんぬっ」
しかし、どれほど力をこめようともびくともしない。天板は予想以上に分厚く、頑強なつくりになっていた。
天板と壁の間にはわずかな隙間があり、風はそこを通り道にしているようだった。駄目もとでそこに指をさしこみ、押したり引いたりしてみるが、隙間の分だけ前後に揺れ動きはしたものの、脱出口となる兆しはみられない。
まんべんなく調べつくし、あきらめて床に飛び降りる。
――するとその時、視界の端に奇妙なものがよぎった。
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