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「……はてさて。こんなもん、浮世では決してありえんよなァ」
思わず、にんまりと口の端が引き上がる。
得体の知れない物に対する警戒はもちろんあったが、それよりもいよいよ現実離れしてきたことに、愉悦の気持ちがにじみ出たのだ。
東雲は好奇心のおもむくままに跳びあがって、箱の上へと身を躍らせた。
わからないモノは徹底して調べずにはいられないのが、忍の性なのだ。
男ひとり分の重さで仕掛けが下降し、石との間にわずかな隙間ができる。
しかしそれらは依然として引きつけ合ったまま安定していた。
「お?」
構わず箱の上に乗りあげると、またしても変わった物を見つけた。
下からではわからなかったが、仕掛けの上部には網目状の金属でつくられた飾り籠がついており、中の空洞が透けて見えた。その中に、黒い蓮に似た花が浮かんでいる。
――そう、浮かんでいるのだ。
光る石も珍妙であるが、格子の中でくるりくるりと回る花もまた異質である。
もしや、これが宙に浮くカラクリの核心部分なのか……。
東雲は短くうなった。
さては、この黒い花か光る石のどちらかが、強い磁力を帯びているのではないか。
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