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天井や壁には赤黒い石材が隙間なく並んでいる。古びた重厚な木戸のとなりには、壁に固定された鉄製の油皿があり、やけに明々とした炎が灯っていた。
部屋の片隅にはいくつかの麻袋と、不気味な植物が数株置かれている。
まるで見たことのない奇妙な草だ。葉や茎にいたるまで透きとおるように白く、てっぺんから細くひしゃげた花弁がだらりと垂れさがっている。見上げるほど高い位置で五枚の花弁が揺れるさまは、さながら痩せこけた病人の手のようだ。
気がついた時にはここにいた。見たこともないこの場所に、丸腰で立っていた。手裏剣どころか、ふんどしすらない。
――あってはならぬことだ。まるで忍の禁戒を端から端まで棚卸しして、盆に並べたようなありさまである。
しかし、上記の事柄だけならば、忍である彼がここまで途方に暮れることはなかっただろう。
「なにがどうなってんだ……!」
弱り目に祟り目とはこのことか。
彼の足もとに転がっているものの存在が、事態をさらにややこしくしていた。
「――鬼じゃ……」
鬼だ。鬼がいたのだ。
赤ら顔の高く突き出した額から、牛のようにずんぐりとした角が二本、ぬっと飛び出している。まごうことなく鬼である。
その鬼が、彼の足もとで喉から血を流しながら死んでいたのだ。
「死んでやがる……、いや、違う……死んだのは――俺か?」
どうやら、ここは地獄らしかった。
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