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青白い石の光に照らされた上階は、せまい踊り場のような場所だった。
短い階段の上に、粗雑なつくりの石扉がある。東雲は用心深くそれに取りつくと、極力音をたてぬよう神経を尖らせながら押し開いた。
たてつけの悪いそれが、ほんのわずかに傾いた時――、一条の光が差しこんだ。
さらに開けば、すぐかたわらに燃えさかる篝火があった。じんわりと汗がにじむような熱気とともに、新鮮な空気が肌をなでる。
直感的に地上へ出たのだとわかった。
扉のむこう側は、石造りの細長い通路になっていた。
どこからか流れてくる風にまぎれて、かすかに磯のかおりがする。海が近いのかもしれない。
誘われるように外へと足を踏み出し、扉を閉めようとした直後、ふいにその手が止まった。
「こいつァ……」
東雲は怪訝な面持ちで眉根を寄せた。
再び腕に力をこめると、扉はまるでそこに存在しなかったかのように、左右の壁とぴったり一体化した。――いわゆる隠し扉というヤツである。
扉の外側は、通路の白い石材とまったく同じ様式で作られていたのだ。
「……あー」
これはマズイ、と忍の勘が警鐘を鳴らした。
はからずも、彼が通ってきた地下は隠し部屋であったらしい。
誰が、どのような意図でこの空間を使用しているのか、という疑問はひとまず置いておくとして。通常こういった場所の周辺は、警戒が厳しいのがお約束である。
これは即刻立ち去るべし、と東雲は足早にこの場を離れた。
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