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(――なっ、にやってやがるッ!?)
全身総毛だつような戦慄が走った。
すぐさま身をひるがえし逃げをうちかける。
しかし東雲の意に反して、彼の足はさらに一歩前へと踏みだした。
敵前へ出たからには後退りは許されないと、頭で考えるよりも早く、本能が結論づけたからであった。
「~~っ!」
こうなってしまっては、もはや破れかぶれである。
東雲はいまいましげに舌打ちすると、上体を低く倒し、赤鬼の死角を全力で駆け抜けた。
一気呵成に膝裏を蹴りつけ、こちらへ背をむけて仁王立つ鬼の体勢をわずかに崩す。
直後、驚異的な腕力によって振りおろされた金棒が、ネズミの真横にある石床を蜘蛛の巣状に砕いた。
見かけに違わぬ恐るべき蛮力である。
こんなもの一発でもくらってしまえば、人の身体などあえなくひき肉と骨粉に早変わりだ。
ぞっと血の気が引き、一瞬にして脳裏に〝死〟の文字が焼きついた。
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