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あまたの死線をくぐり抜けてきた東雲は、この場に生へとつながる望みが露ほども残っていないことを、ひしひしと肌で感じていた。
(冗談じゃねぇッ)
里に仕えて十数年、いつかこうなるのではないかと思っていた。
東雲は、自分が里にとって塵ほどの価値しかないことを、とっくのとうに理解していた。
それでもこの土地に縛られ続けたのは、そうする以外に生きるすべがなかったからだ。裏切れば殺される。忍務をしくじっても殺される。生きるためには、里から課される無理難題を命がけでこなしていくしかなかった。
しかしその辛苦も、今日この時をもって、泡となって消えるらしかった……。
(ちくしょうッ、ふざっけんな! 死んでたまるか!!)
希望はすでにことごとく握りつぶされ、勝算などどこにもありはしない。しかしだからといって、このまま里の思惑通りやすやすと殺されてなるものか。
東雲は振り向きざまに追手の腹部を斬り裂いた。
生への執念だけが、彼に残された最後の砦であった。
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