02:小川三水の[依頼と邂逅]

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「まあ、パクリ云々は冗談です。たしかに創作には材料が要りますよね」 「そうですね。それと表現力を増やすためにも言葉を知るというのもありますね」 「言葉ですか」 「その場面や登場人物に合った言い回しを使わないと、違和感が出ますからね。おかげで昔に比べて老若男女問わず人と話すのが気にならなくなりましたね」 「なるほど、今もそうという訳ですか」  私は失礼な物言いだったかなと思いながら、コーヒーを飲んだ。  目の前の男の名は、ミドウと名乗った。探偵だそうだ。もらった名刺には、 TMS探偵事務所 所長 西御堂あずら と印刷してある。[西御堂]も[あずら]も言いづらいらしくて、まわりからはよくミドウと呼ばれているそうだ。私は姪の勧めもあって、つい最近[小川三水]名義の名刺を作ったので、それを渡した。  肩書は小説家というのが照れ臭かったので、ライターにして、あとは携帯電話の番号だけが印刷したシンプルなやつだ。
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