02:小川三水の[依頼と邂逅]

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 いや、まだ亡くなっていなかったかな。なにしろ表舞台に立たなくなって随分になる。あんな傑物はしばらく世に出てこないだろうな。 「森友魁山についてはどのくらい御存知なんですか」 「森友魁山、本名森友修一郎。大正7年生まれで昭和初期の動乱を生きぬき、戦後に事業を興し財界に一目おかれる存在となる。  その後、出馬して政界に進出。政治と経済の両輪で壱ノ宮を大いにもり立てる。  政財界を引退後は芸術家として名を馳せる。彼の残した絵画、書、陶芸、彫刻は後に魁山コレクションとして高い価値がついている。  後進の育成にも精力的に行い、彼の薫陶を受けた人達は、[魁山チルドレン]もしくは[魁山の子供達]と呼ばれている。 こんなところかな」  私は知っているだけの、魁山にたいする知識を並べた。 ミドウは黙って聴いて、聴きおわると 「素晴らしい、よくそこまで知ってらっしゃる」 と、にこやかに音のでない拍手をしてくれた。
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