02:小川三水の[依頼と邂逅]

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 だが、魁山の生きた時代は資料が多く、さらには生き証人までいるのだ。[物語]にするのにはリスクが多い。やはり食指が動かないな。  その考えをミドウに伝えると、ミドウはちょっと考えて、 「小川さんは、小説というか物語専門ということですか」 そう言われると困った。いちおうエッセイ的な物も書いている。小説というジャンルにこだわることなく、物書きという立場の方が自分の心にしっくりとくる。そう言うと、 「ならばフィクションにこだわらずノンフィクションで書かれたらどうでしょう」  どうやらミドウは私に魁山の話を書かせたいらしい、そこに疑問を持った。会ってそれほどでもないし、私の作品を読んだこともない、それなのに私に書かせようとする。それとも魁山の話を書く人なら誰でもいいのだろうか。 「ミドウさん、魁山の事を知りたいのならそれこそ図書館に行かれればいい。実際、郷土の偉人コーナーで森友魁山だけでひとコーナー出来ているくらい資料があるのだから」
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