01:小川三水の[この川原は二人の思い出の地となる]

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 少し距離はあるがキソ川堤の駅から土手を下流に向かって進むと玉ノ井という駅にでる。休み休み歩けば、ちょうどいいウォーキングのコースだと思う。たぶんそうなんだろうと、勝手に想像してみる。 そんな私の視線に気づいたらしい、女性の方がこちらを見てニッコリと笑い会釈をしてくれた。あわてて頭を下げ、挨拶を返した。ぶしつけな視線を感じたのかな、よくこの距離で私の事をわかったなと、そう思ったが、女性の視線を感じるセンサーは、野生の猫系大型肉食動物のそれより鋭いのを思い出した。老若を越えて女性はあまり見ないようにしよう。そんなことを思っていたら、挨拶をしてくれた。 「こんにちは」 「こんにちは」 と、挨拶を返した。 「ウォーキング? 」 「いえ、この石碑を見に来ました」 「ああ、何代か前の陛下が立たれた所でしたっけ、たしか? 」 「よくご存知ですね あまり知られてない場所なのに」 「教えてもらったの」 そう言いながら連れの男に目を向けた。 ああ、こちらの方が教えたのか。なんとなく納得した。
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