01:小川三水の[この川原は二人の思い出の地となる]

6/14
前へ
/80ページ
次へ
「ある日出た大会に、この人も出ていたのよ! ビックリしちゃって、思わず話しかけちゃったの! 」 はしゃぐように話す奥さんは、少女のようだ。恋バナは、年に関係なく女を可愛くするらしい。 「それからお付き合いを? 」 「ええ、会社に内緒で帰りに待ち合わせして、食事したり飲みに行ったりね」 ごちそうさま、と言いたい気持ちだが、まだ決闘に繋がってない。こちらから振ってみるか。 「ひょっとして喧嘩したとき、ここで決闘したのが思い出ですか? 」 先走ったかな? と思ったが 「ううん、つきあってた時は喧嘩しなかったわ。その前に、この人は父と試合したもの」 なんか予想外の話になったぞ。 「この人をね、父に紹介するとき空手をやっていると話したら、父が手合わせをしたい、と言ってそれで道場で試合をしたの」 「それはまた、どういうつもりだったんでしょう? 」 「さあ? 男の考えてることなんて解んないわ」 クスリと奥さんは笑った。 「でね、この人、負けちゃったの」
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加