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「お父さん、お強いんですね」
「そうね、でもあの時はけっこう父も必死だったわ。それでね、この人が[後日また手合わせをお願いします]って言って、帰っちゃったの」
「なんでまた? 」
「さあ? とにかく毎週末には家に来て、父と試合。最初のうちは試合が終わると帰っていたけど、そのうち試合後に父と一緒に風呂に入ったり、飲みに行ったりして、最後の方は家で家族揃って食事してから帰るようになったわ」
その頃を思い出したのだろう、遠い目をしながらニコニコしている。
「勝敗はどうだったのですか? 」
私はすっかり奥さんの話にハマっていた。今日は史跡の取材は無理だな、また今度にしよう。
「ずっと、父が勝っていたんだけどね、完全な 一本をこの人が取った時があってね。その晩の食事のときに[娘さんを僕に下さい]って父に言ったのよ」
「ほほう、ドラマチックですね」
「こっちはそれどころじゃないわよ。そりゃあ結婚する気だったけど、相談も無しに、いきなり父に言うでしょ。父は父で[よろしく頼む]って返事して二人で盛り上がっているし、私だけ置いてきぼりじゃない。だから私は[結婚しないっ!! ]ってその場で言ってやったの」
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