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灼熱の中
脱出に使ったエレベーターは止まっていて使えない。ので、重い装備を引きずって階段を上ることに。
熱遮断の重く分厚い扉を二人がかりで開けた。暗いなかに地上へと続く階段が現れた。
「では行きましょう」
先を歩く二人の背中が見える。背中にしょっているのは空気を冷やす装置だ。これが無いと熱された空気が直接肺に入り気管をやけどしてしまう。
スーツにも冷凍された保冷剤がいくつも張り付けてある。これが持つのは1時間ほど。地上で活動できるのは行き帰りの道のりを差し引いて30分ばかり。その間に作業を終わらせなければならない。
耐熱素材でできたスーツの中は熱がこもる。インナーはすでに汗だくだ。それでも地上の暑さの方が危険なのだ。
「大丈夫ですか」
若い男性の声には余裕が感じられた。
ゴーグル越しで見るいつものマンションは不思議な感じがした。
「では私たちはここで」
職員二人は頼まれた他の住民の物を回収しに行った。
時間内に戻らなければすぐに捜索隊が緊急招集されるだろう。そうなれば莫大な費用を負うことになる。
俺は重い足を引きずって階段を上っていく。
左右へふらふらと視界が揺れる。吸う空気は冷たくておかげで何とか動くことができている。
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