エアコンが壊れた日

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ

エアコンが壊れた日

エアコンが壊れた。 正確にはマンションの共通の空調が故障したのだ。 昨日、警報音が鳴ったので地下に避難したらそのまま部屋に戻れなくなった。 (まいったな) 警報が鳴ったのは空調が故障したからだ。管理人に尋ねたところ、今季中には戻れないらしい。 今頃、俺の部屋は高温にさらされているのだろう。 とりあえず、昨日は地下のゲストハウスに逃げ込み一晩を過ごした。 問題は今後だ。 安全期に空調が直っていないと来年まで部屋に戻れないことになる。 ネットで半年ばかりを過ごせそうな部屋を探していると俺と同じように地上の家に住めなくなった人用の長期宿泊施設がいくつか見つかった。 給与と比較して入れそうな部屋を見つけ、早速メールを飛ばした。 今日もここで泊まり、明日以降に新たな居住先が見つかり次第外出許可をもらい家財道具を持ち出そうと思う。 いつの頃からか都市部では平均気温50度に達するようになった。 季節も四季というものがあったらしいが、今では灼熱期と寒期が一年のほとんどを占め、残りの平均気温が20度前後の期間が安全期と呼ばれるものになっている。 灼熱期は外出が完全に規制され、都市部では地下での生活が普通のものとなっている。 元々地下が発達していた東京は次々と地下施設が建設され、地上がメインで活動していた時と同じような生活がすぐに送れるようになっていった。 カフェで時間をつぶす。 地上の様子を映し出すディスプレイが壁に掛かっている。専用のカメラが地上にあるようだ。 人はいない。 当然だ。外出には特別な許可と専用のスーツが必要になる。 安全期にこのカフェは地上でも営業しているらしく、ディスプレイには無人の店内から外をとらえたカメラの映像が流れていた。 右端にはテロップで地上の温度が55度であると示している。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!