灼熱の中

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背中の装置の駆動音が安心させる。 ようやく俺の部屋の階にたどり着いた。ここまでも廊下も壁で覆われ外が見えない。明り取り用の天井部の曇りガラスが今は昼間だと告げている。 慣れたはずの廊下も時間をかけながら進むしかない。そしてようやく我が家にたどり着いた。 久しぶりに持つ物理鍵を鍵穴に差し込み回す。装置がすべて止まっているのでマイクロチップでは開かないのだ。 数日空調が止まっただけの部屋の中は60度に達しようとしていた。 スーツごしでもむわっとした暖気が伝わってきそうだ。 手に持ったガス検知器には異常を知らせる反応はない。熱で気化した化学物質の影響はなさそうだ。 もし何らかの異常があった場合は、背中の装置の機能を切り替え酸素ボンベからの空気吸引にしなかればならない。 俺は目的の本と道具箱を探すことにした。 場所はわかっていた。いつもの作業台の上、誰も触ることなくあの日のまま置いてあった。 ガス検知器で調べると、案の定気化した物質の反応が出ていた。しかし危険物質ではない。 玄関を出ると白い特殊スーツの誰かが立っていた。少なくとも一緒に来た職員ではない。     
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