火を噴く

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北村が機銃を気にかけながら嫌な顔をしていた。 「さっきの至近弾で鉄砲の照準がやられたらしい」 「だったら次は俺たちが一番に墜としてやろう」  それだけ言って勇は艦内に戻っていった。  最上甲板には随所に血飛沫があったが、持ち主の場所を示すようにその場から点々と血痕がハッチへと続いている。一体何人やられたのだろう。弾薬を両手に抱えながら考えていた。    戦闘配置が解除される気配はなく、みな持ち場で煙草をふかしていたその時、再び対空戦闘のラッパが鳴り響いた。即座に火をもみ消し、北村は機銃座に、勇は弾倉に飛び移った。 「来るゾ来るゾ!」  遥か上空に、ポツポツと敵機が現れた。うっすらと確認できるが機銃が届くはずもなく、彼ら機銃員は射程距離に入るまで爪を噛んで敵が近づくのを見つめているしかなかった。もどかしい感情はどの機銃員も同じだ。  編隊は解列し、各個戦闘態勢に入る。爆撃機は、密雲を利用して艦尾側と艦首側から挟撃して急降下を始めた。雷撃機は左舷上空から緩降下していき、ポツンと爪楊枝のような魚雷を海面に落とした。魚雷は一度姿を消すと白い気泡の航跡を残しながら真っ直ぐ武蔵に向かってくる。     
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