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上空は再び胡麻のような斑点に飾られ、煤煙に包まれる。海上から発射される曳光弾が吸い込まれるように雲間へと消えていく。
「直上! 直上!」
誰かが叫んだ。口笛を吹きながら今度は徹甲弾が左舷の機銃群に直撃。そのまま徹甲弾は最上甲板と上甲板を突き破り、中甲板まで沈んでいった。
耳を劈くような金属の悲鳴と人間の断末魔があって衝撃が全身を貫く。五体満足か確認する暇なく見張り員が叫んだ!
「雷跡! 雷跡! 左からくるぞ! 左だ!」
魚雷を避けるのは操舵室にいる者たちの仕事だ。気にしている暇はない。勇らに出来るのは被雷する恐怖に、腹の底に力を入れて踏ん張ることだけだ。
第二射になったため、曳光弾で飛行機との誤差を修正していく。腹を見せ、旋回していく飛行機を追って、大きく右に回った瞬間、一発の爆弾が左舷揚錨庫室上部で炸裂した。続いて何度か左右へ振られるような揺れを感じたと思ったと同時に、目の前に大瀑布が出現した。
被雷した!
巨大な船体なだけあって動きは鈍く、舵が利きはじめるまで九〇秒を要する。あらゆる方向から魚雷が迫って避けきれるわけではない。船体が幾度か傾斜したが直ちに反対舷に注水、復原した。さすがは不沈艦ではある。
「北村! あれだ!」
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