36人が本棚に入れています
本棚に追加
「また来るよ」
グリンは言った。グリンは飲んでも飲まなくてもどっちでもよかったが、ニッキが困っていたからだ。ニッキは喫茶店に来るのを、楽しみにしていたから、店主さんが喜ぶお礼をしたかったのだろう。
「いいんだよ。ほら、もうコップにジュースを注いでしまったから、飲んでくれないと無駄になってしまうよ」
カメレオン店主は言った。
「あのね。カメレオン店主さんは、何が好きなの? 今度来るとき、持って来たいんだ」
ニッキは今日、お礼を渡すのはあきらめた。ジュースもカメレオン店主さんの気持ちも無駄になってしまったら、もったいない。
「お代のことかい? それならなんだってかまわないよ」
カメレオン店主は手際よく、飲み物の入ったコップをお盆にのせて、運んできた。
「さあ、座って」
グリンとニッキは、近くのテーブルに座った。グリンの頭からレインが顔を出して、珍しそうにキョロキョロした。
「おやおや。小さなお客さんもいたんだね」
店主はレイン見つけて言った。そしてカウンターに戻ると、小さなコップにジュースを入れて持ってきた。
「あんたの好きなものをあげたいんだよ」
コトン、とカメレオン店主がテーブルにコップを置くと、グリンが言った。グリンは別に店主と話したいわけではなかったが、ニッキの望みは叶えてあげたかった。
「ふーむ。じゃあひとつ、考えてみよう」
店主は考えてみた。何が欲しいか聞かれたのは初めてだった。
カメレオン店主は考えてみたが、分からなかった。サルがバナナをくれた時には、バナナが欲しかった気がする。ウサギがニンジンくれた時には、ニンジンが好きだった気がした。
でも今、何が欲しいか考えてみたら、バナナもニンジンも、その他にもらったことのあるなにもかも、欲しいとは思わなかった。
「あれっ。困ったな。何も思いつかない」
最初のコメントを投稿しよう!