グリンの森の喫茶店

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 カメレオン店主は腕を組んで、ウーンウーンと考え出した。  グリンはグラスを手に持った。そーっとクチに運ぶ。自分が作ったものでもなく、ニッキが作ったものでもないものを口にするのは初めてのことだ。  「うまい」  一口飲んでみて、グリンは言った。  「おいしい!」  ニッキも言った。  そのとたん、カメレオン店主は悩んでいたことも忘れて、嬉しそうに笑った。  「そうかい? おいしいかい?」  カメレオン店主は、おや、と小さなカップを見て思った。少しも減っていない。  「レインはグリンの葉っぱが好きなんだよ。他にも僕か子どもがあげたものは食べるけどね。大人が何かあげても食べないんだ」  ニッキが説明した。  「せっかくくれたのに、ごめんね」  すまなそうにニッキが謝った。  「いいんだよ」  カメレオン店主は言ったが、とても残念な気がした。自慢の飲み物を飲んでもらえないことは初めてだった。  グリンの頭の上の鳥を見てみると、グリンの頭の葉っぱをパリパリ食べている。  鳥は虹色の輝く羽根をしていた。  (私は何色でもなれるけど、虹色にはなった事がないな)  と店主は思った。    「それじゃ、その子の羽根を一枚、もらえるかい? なに、抜けた時でいいんだ」  「レインの羽根? だけど羽根が抜けたところ、見たことないんだけどなあ」  ニッキは首をかしげた。  「ちょっと言ってみただけだから、それならいいんだ」  カメレオン店主は言った。でももらえないとなると欲しくなってきた。こんなことは初めてだ。  それに虹色の鳥が、カメレオン店主のジュースを飲まないのも気になる。  「それじゃあ、雨の日にまた来ておくれよ」  カメレオン店主は思いついたことがあったのだ。
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