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そうなるとレインに何か食べさせるというカメレオン店主の目的はなくなったが、カメレオン店主はグリンとニッキとのんびり過ごす雨の日が楽しくなってきた。
グリンはニッキの話にうなずいたり、たまにカメレオン店主に「うまい」と言うだけだが、カメレオン店主はだんだんグリンが好きになってきた。
カメレオン店主は体の色を変えたりしてサービスする必要はなかった。
四人で雨がヤマイモの葉っぱにあたる音を聞いたり、カメレオン店主が作ったものや、グリンが持ってきてくれる食べ物を一緒に食べたりするのも楽しかった。
「また雨の日に来ておくれよ」
三人が帰るとき、カメレオン店主はいつも言った。
「店主さんは何が欲しい?」
ニッキもいつも聞く。
「そうだな。グリンが作ったパンが食べてみたいな。ニッキも好きなんだろう?」
カメレオン店主は欲しいものが出てくるようになった。グリンは「ふん」と横を向いて聞こえないふりをしていたが、次の雨の日には、カメレオン店主が欲しいものを持って喫茶店にやってきた。
カメレオン店主が欲しいものを作る材料が集まらないときは、カメレオン店主が好きそうな物をかわりに持って行ったが、そのたびにカメレオン店主の好物が増えた。
グリンがカメレオン店主のために選んだ食べ物は、カメレオン店主には特別においしい味がしたからだ。
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