0人が本棚に入れています
本棚に追加
「やーだーーーーっ!」
更に大泣きする男の子。
「そんなに嫌なら!おかあさんもう知りません!」
「ほら。うさぎさんだって可愛いだろう。ほら。お前がそんなに嫌がるからうさぎさんさみしそうじゃないか」
うさぎさんは両手で顔を覆った。精一杯悲しんでいた。
「嘘だ!だってずっと笑ってるじゃんか!!」
うさぎさんにはどうしよもなかった。男の子は不貞腐れていたものの両親に置いていかれる不安が勝ったのか両親に駆け寄って行った。
「来てきて!!写真撮ろう!」
中学生くらいの女の子がうさぎさんに向かって走ってきた。後ろからやって来たのは彼氏と思われる男の子。うさぎさんを取り囲んで自撮り棒で撮る。うさぎさんは満面の笑みでふたりの間に収まった。撮ったものを確認するふたり。
「うさぎが大きすぎてふたりが入りきってないよー」
「ホントだ。じゃあうさぎに撮って貰えばいいんじゃないか?」
「あはは。天才!」
ふたりにスマホを託されたうさぎさんはふたりの写真を収めた。うさぎさんの要素はどこにも無かった。
「暑い…」
着ぐるみのなかで俺はぼそりと呟いた。風船は全部捌けて俺はベンチのうえに座った。遊園地の明るい声、陽気な音楽、俺は空を見上げた。
最初のコメントを投稿しよう!