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「そしてそれは成功した。今や、はなまる煎餅といえば誰もが知る有名な店に成長した。だが、今まで手作り煎餅でうたってきたのに商業拡大のために機械を導入。監修は私がしているとはいえはたしてこれが先代たちが守ってきたはなまる煎餅といえるのだろうか?いや、いえない!」
暑い。ひたすらに暑い。洋服はもう汗でぐっしょりだ、早く話しを切り上げてもらえないだろうか。正直はなまる煎餅なんて知らんし。
「だが、今から工場を廃止などできるわけもない、妻や子供たちも今の形で納得してくれている。だが、今の煎餅を食べても俺は心の底から納得することができない!…ならば工場で味を極めればいいのではないか。と君はおもうだろう」
いや別になにも考えていませんけれど。
「先代は手作りにこだわってきたんだ!それを、私が、俺が壊してしまった!!なんて罪深いことをしたのだろう」
「いや、ならば手作りをすればいい。もちろん本店では手作りをしている。だが、それは一種のパフォーマンスになってしまっている!焼き立てのものを食べた人は、おみやげに買おうと、工場で作られたものを買っていく。それは同じか!?同じものであるはずがない、同じではない!!」
ああ。帰りたい。
「私は、私はどうしたら」
何かよくわからないけれど俺は男の背中をぽんぽん叩いてやった。
「うさぎさん。いや、なも知らぬオヤジさん、ありがとう」
おい、人が親切にしてやったらなんだ!きぐるみの中身が全部おじさんと思うなよ!あんたよりもよっぽど年下だ!
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