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高校卒業後、大学に進学して二年が過ぎた頃、在学中に今の夫と婚約した。 結婚してもうすぐ十年が経つ今、幸せに鋭さもなければ棘のようなものもない。 波風のたたない安定した生活は穏やかに緩やかに流れていく。 「幸せってこんなものなのかな」 と笑顔で友人に話せるだけの幸せ感はあったりして、それなりに楽しく過ごしていた。 「同窓会の案内がきてたよ、懐かしいな。僕は行けないからみゆきだけでも行っておいでよ」 そう夫に促され、断る理由もなかったので当時、仲の良かった友人に連絡を取り、行くことにした。 「久しぶりだなぁ。来てたのか、みゆき」 真人のこの変わらない声にあの日の記憶が蘇った。 変わらないのは声だけじゃない。 見た目も少し大人っぽくはなったけど、あのままだった。 話し方も、笑った時の顔も、全部があの頃のままだった。 私はちょっと老けたかな? そんな事を思ってしまった。 「帰ってたの? 連絡くらいくれれば良かったのに」 「仕事でな、ちょうどいいタイミングでこっちに帰ってたんだよ。聞いたらみゆきも来るって言うから会いたくなってさ」 恥ずかし気もなく会いたいなんて言う所もまるで変わってない。 「そうなんだ、私の事気にしてくれたんだ」 皮肉を言ったつもりだったのに。 当たり前だろと返されて私の方が照れてしまう。 こんなやり取りも昔のままだ。 「そういえば結婚したんだってな? おめでとう」 「もう十年も前の話よ」と笑った。 「そうか」と真人も釣られて笑う。 「だから言っただろう? あいつの事は信用していいってな」と何故か勝ち誇った様な顔をしていた。 それから真人の仕事の話、私の結婚生活の話、子供の話が終わる頃にはまるで毎日、会っていたかのような感覚になった。 真人が不意に、あのプールまだあるかな? と懐かしそうに言ったから、行ってみる? と冗談で返すと、いいなと子供の様に無邪気な笑顔を私に見せた。
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