190人が本棚に入れています
本棚に追加
あながち外れていない答えとその問いかけに、どきりと肩を跳ね上がらせ、だが同時に閃く。それは雲間から顔を覗かせた月明かりのような、確かでしかし淡い閃きだった。
相手は俺が何者か気づいていないのだから、これは使えるかもしれない。
「そう、実は従兄弟なんだ。こっちに来たんだけど……」
全て言い切る前にシゲちゃんは目を輝かせて、頭の天辺から爪先までを何度も辿り、最後にもう一度顔を覗き込んで声を弾ませた。
「おお! やっぱそうか! どおりでしょうちゃんに似とる訳じゃ」
「そ、そうかな?」
シゲちゃんは、どうやら想像以上にお人好しなようだ。困惑気味な答えに、腕を組み繰り返し「うん、似とる!」と頷いて見せた。
しかしここまで手放しで信じてくれると、なんだか騙しているみたいで申し訳ない気持ちになる。申し訳なさと新たに浮かんだ問題に俯き、暗闇に視線を落とす。
「どげんした? ひょっとワレ、家の場所知らんのか?」
そう、俺は祖父の実家の場所を知らなかった。
最初のコメントを投稿しよう!