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1-0 手紙
7月も半ばを過ぎた昼下がり。俺、野崎 翔は祖父母の家にやって来ていた。
じりじりと焼けつく日差しに、地を這う蟻の行進。彼方の入道雲を見て、ふと祖父の口癖を思い出す。
「今日も平和じゃ、何もないのが一番幸せじゃよ」
それが祖父の口癖だった。まるで噛み締めるように、けれどもどこか悔いるように。
祖父と会う度に毎回必ず聞かされた戦争の話。当時を知らない自分にとってはどこか他人事で、あの頃何があったのか興味もなく「またか」と聞き流してきた。
当時、17歳だった祖父には『シゲちゃん』という同年代の友人がいた。だが戦禍に巻き込まれ、終戦の折、広島で死んでしまったらしい。
先月、祖父が亡くなった。
「シゲちゃん、ごめん……ごめん……」
いまわの際、祖父は繰り返しそう言っていた。その言葉の意味が分かったのは、つい最近のこと。
それは、整理をしていた時に偶然戸棚で見つけた手紙。
「これ……」
比較的最近に書かれたと思われるそこには、祖父が友人の『シゲちゃん』に宛てた言葉が綴られていた。
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