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不器用な自分に果たして務まるのか正直不安でしかないが、しかし、それ以上に気になったのは工場の内部だ。一見すると鉄骨の壁に一定間隔で並ぶ窓がついた極上ありきたりな内装。
一度も来たことはないが、なぜか見覚えがあった。それがなぜなのかどうにも思い出せない。
そもそも、俺がここに飛ばされた目的とは。何か重要な意味があるのではないか。
仰向けに寝転がり、ぼんやりと祖父の部屋の天井を眺め、自身の中でその理由を問う。当然、その問いかけに答えてくれる者など誰もいない。
ーー翌、7月26日。
昨日より少々早めにシゲちゃんは家へ来た。通常ならば真っ直ぐ向かうのだが、少し回り道をして、河川敷を歩く。
市街地の少し外れ、元安川の近くにある工場までは、歩いて小1時間というところだろうか。
「しっかし、今日も朝からあっついのぉー」
悪態を垂れ真っ青な空を一瞥した、されどその笑顔は、照りつける太陽と同じくらい眩い。
「まあ、夏だからね」
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