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ふと、鞄に入れたままの手紙のことを思い出す。そうか、じいちゃんがした約束ってこのことだったのか。だとしたらシゲちゃんはーーそう思った、その時だ。
隣でばしんと景気よく何かの弾ける音がした。驚いて音のした方を見ると、シゲちゃんが顔を歪め後頭部を押さえている。更には、それを追いかけるように高らかな声が。
「まぁたそげなこっ言っとるんか!」
咄嗟にそちらへ視線を送る。同い年くらいのもんぺを穿いた少女が腰に手を当て、眉をつり上げ頬を上気させ、怒り心頭といった表情で立っていた。
「痛てて……なんじゃ、サチか」
シゲちゃんは景気よく叩かれた頭を擦りながら、またかと言いたげな口調で振り返る。
ーー『サチ』? 彼女のことか?
いきなり現れた少女に対応しきれず、俺はただただ2人の様子を窺う。すると肩の下まである長い髪をふたつ括りにした少女は、鼻息も荒く詰め寄り言った。
「なんじゃとはなんじゃ! そげんこと言いよるけぇ、いっつも『非国民』呼ばれるんよ」
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