1-2 澤田《さわだ》 滋《しげる》

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   故意にかは定かでないが、どうやら、彼女は今の話を聞いていたようだ。 「シゲちゃん、この子は?」  祖父の手紙を読んだだけで、関係性のある人間がシゲちゃんだけだと思っていたから驚きだった。なので、面食らったまま訊ねる。 「ああ、こいつ幸子(さちこ)いうんじゃ」  シゲちゃんに言われ、彼女は初めて俺の存在に気づいたのか目を丸くして頭の天辺から爪先まで見て口を開く。 「なぁ、シゲちゃん。この子誰じゃ?」  いや、俺も今まったく同じこと訊いたんだが……。お互い、初めましてよりも先に同じことを言った、それが妙に可笑しくて(くすぐ)ったくて。 「おお、忘れとった! サチ、こいつはしょうちゃんじゃ!」  2人の間に挟まれたシゲちゃんが、今度は『幸子』という少女に向かって俺を手で示し答える。シゲちゃん、大忙しだな。 「“しょうちゃん”?」  祖父と呼び名が同じだったからか、不思議そうにこてんと小首を傾げ、2、3度(まばた)きを繰り返す。その雰囲気は、なんとなく幼馴染の由衣に似ていた。  
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