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これまですぐ側にいたシゲちゃんがいないことに、声を上げて辺りを見回す。その時、
「ーー!」
瓦礫の中から誰かが右足首を掴んだ。伝わる生暖かい感触に、シゲちゃんなのか!? はっとして振り返る。
足首を掴んでいたのは、瓦礫の奥から伸びる、誰のものとも知れない右手だった。ガラス片が刺さり、焼け爛れたその手は弱々しく足首に纏わりつく。
「ぅ、わあっ……!」
驚きのあまり間抜けな声を上げ、咄嗟に反対の足で誰のものか分からない焼け爛れたその手を思い切り蹴飛ばした。蛋白質が溶解し出来た糸を引きながら、ゆっくりと五指は離れて瓦礫の奥へと消えてゆく。
足首には、未だに生暖かく湿った不快な感触だけが残る。手や顔の誰かには悪いという気持ちで一杯だったが、今の自分にはシゲちゃんを助けることが先決だった。
「シゲちゃん!」
気を持ち直し、左腕に刺さっていたガラス片を引き抜くと再び辺りを見回す。すると、
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