1-3 8月6日

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   折り重なる瓦礫のその向こうに、それらしき人物が(うつぶ)せに横たわっているのが窺えた。シゲちゃんなのか? 負傷した左手を庇いながら、四つん這いで距離を詰める。 「……痛っ」  左手を地面に着く度、ガラスで負った傷口に痛みが響く。ようやく確認出来た人物は、紛れもなくシゲちゃんその人だった。  シゲちゃんの右肩から腕にかけては火傷して、その肉が剥き出しとなった場所を沢山の割れたガラスが(えぐ)っていた。快活な印象を与えていた黒く短い髪は、ちりちりに縮れて皮膚が覗いている。  「うぅ……」とわずかに漏れた声。火傷こそ酷かったが、どうやら息はしているようだ。  安堵に息をついたその時、瓦礫の側に落ちた1枚の紙切れが目に留まる。(すす)けてはいるが、それは間違いなく祖父の手紙だった。  すぐそこにまで迫る炎は勢いを増し、どうするかなんて考えている暇はない。俺は落ちていた手紙をひっ掴み、なくさないよう握り締めるとシゲちゃんの方に向き直る。 「はよ掴まれ!」  
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