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折り重なる瓦礫のその向こうに、それらしき人物が俯せに横たわっているのが窺えた。シゲちゃんなのか? 負傷した左手を庇いながら、四つん這いで距離を詰める。
「……痛っ」
左手を地面に着く度、ガラスで負った傷口に痛みが響く。ようやく確認出来た人物は、紛れもなくシゲちゃんその人だった。
シゲちゃんの右肩から腕にかけては火傷して、その肉が剥き出しとなった場所を沢山の割れたガラスが抉っていた。快活な印象を与えていた黒く短い髪は、ちりちりに縮れて皮膚が覗いている。
「うぅ……」とわずかに漏れた声。火傷こそ酷かったが、どうやら息はしているようだ。
安堵に息をついたその時、瓦礫の側に落ちた1枚の紙切れが目に留まる。煤けてはいるが、それは間違いなく祖父の手紙だった。
すぐそこにまで迫る炎は勢いを増し、どうするかなんて考えている暇はない。俺は落ちていた手紙をひっ掴み、なくさないよう握り締めるとシゲちゃんの方に向き直る。
「はよ掴まれ!」
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