1-3 8月6日

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   一声上げると同時に、彼の左腕を肩にかけて担ぎ上げた。シゲちゃんをこんなところで死なせる訳にはいかない。  左手を盾に降りかかる火の粉を避けながら、まだ火の手が及んでいない川縁を目指す。  路面電車は炎に包まれ、立ち上る煙と爆弾によって生じた雲が空一面を覆い、太陽を遮る。その中で明々と燃える炎だけが、見る影もなくなった街を照らしていた。  今朝までの平穏でけれども活気に溢れた街並みは、もうどこにもなかった。  前方から、ゆっくりとこちらへ近づいて来る人。  その人物は、男か女かも分からないほど全身に熱傷を負っている。火傷により剥がれ落ちた皮膚は指先からだらりと垂れ下がり、最早それが服なのかどうかも見分けがつかない。  ただ、掠れた呻き声と共にぼろ布のようなそれを不規則に揺らしながら、ふらふらと消火用の四角い水瓶(みずがめ)に向かい顔を突っ込む。人物はそのまま動かなくなった。 「ーー!」  今、何かが聞こえたような。……気のせいか。  
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