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一旦言葉を切った後、未だに下敷きとなっている体半分に視線を送り再び口を開く。
「ウチの足な、柱に潰されてしもうとる。感覚がないんじゃ。じゃけ、もうええんよ」
「そんなん、いい訳ないだろ!」
気づいた時、柄にもなく声を荒らげていた。祖父が生きて帰り、再び何事もない穏やかな日常を願っていたのに、それがこんなところで終止符を打つなんて、何がいいものか。
どさり、隣でシゲちゃんがふらつき頭から倒れる。地面に突っ伏すシゲちゃんと、家屋の下敷きになったサっちゃんを交互に見比べ、今一度柱を押し上げた。
しかし崩れた屋根は一向に動く気配を見せない。火の手はもうすぐそこまで迫り、サっちゃんは「逃げえ!」と一言。
「こんままじゃったら、しょうちゃんらまで巻き添えになる! ウチ、こんなとこで死んで欲しゅうないんじゃ! じゃけ、はよ逃げぇ!」
初めこそ落ち着きを孕んだ諭す口調だったものの、次第に訴えかけるような必死で荒っぽいものへと変わってゆく。
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